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Vol.002

テクノロジーで旧来の金融サービスを革新し、 日本が抱える社会課題を解決していく。

株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏

テクノロジーで旧来の金融サービスを革新し、日本が抱える社会課題を解決していく。株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏 テクノロジーで旧来の金融サービスを革新し、日本が抱える社会課題を解決していく。株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏

株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏

PROFILE 株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏

米国セント・マイケルズ大学経営修士課程修了。2社のExitを経て、株式会社コミュニティファクトリーの設立に参画し、取締役CTOとして活躍。ヤフーへ売却後、スマートデバイス推進本部テクニカルディレクター、アプリ開発事業本部長、ヤフー社モバイル戦略責任者に就任し、IoTプラットフォーム事業ユニットマネージャー、子会社のTrill社取締役、インド通信キャリアとの合弁であるIgnite World Ltd.社取締役を兼務。その後、BCG Digital VenturesにTokyo RegionのCTOを経て、2017年7月より株式会社FOLIOに取締役CTOとして参画。

Webサービスの思想でゼロから構築したシステムで、斬新なオンライン証券を実現。

及川
まずは椎野さんがCTOを務めるFOLIOについてご紹介ください。
椎野
FOLIOは現在、テーマ投資型のオンライン証券を展開しています。当社のサービスは、通常100株以上の単位で行う株式取引を1株単位から可能にすることによって、10万円前後で分散投資ができる仕組みにしていることが大きな特徴です。お客様は興味や関心のあるテーマをえらぶだけです。そして、我々がターゲットにしているのは、株式投資に興味はあるものの、心理的なハードルを感じてなかなか踏み切れない方々。そうしたみなさんに、もっと気軽に株式投資を楽しみながら資産運用してほしいというのが我々の想いです。
及川
2017年からサービスを開始されたとのことですが、いま事業はどのような段階にあるのでしょう?
椎野
2017年の7月にクローズドの招待制のベータ版をオープンし、11月から一般の方々に向けたベータ版を公開しました。2018年春以降にスマートフォンアプリにも対応したサービスを本リリースする予定であり、大々的なプロモーションも実施していきます。
及川
そのシステム開発を椎野さんが統括していらっしゃるのですね。
椎野
はい。我々は新しい金融システムを自らフルスクラッチで作り上げています。こうした取り組みは、おそらく日本の金融業界では珍しいのではないでしょうか。加えて、私自身もそうですが、当社の技術陣には金融のバックグランドを持っているエンジニアが実は少ないんです。ゴリゴリの金融系技術者ではなく、これまでWebサービスを手がけてきた人間が中心になり、必要な機能を定期的に追加リリースしながら開発を進めているのも特徴的だと思います。
及川
証券などの金融システムに精通したエンジニアは世の中に結構いらっしゃると思いますが、敢えて専門家は採用されていない?
椎野
もちろん、証券のディーリングシステムなど特殊な知見が求められる領域の開発には専門のエンジニアを採用しています。一方で我々が本当に実現したいのは、レガシーな金融をブレイクスルーして社会に新しい仕組みを創り出すことなんですね。サービスのコンセプトも、Webサービスと同じ世界観をユーザーに対して提供したいという想いがありますし、システムの構成も、モダンなアーキテクチャで少人数でも効率的に回せるようにという考えがある。そうした観点で採用のターゲットを決めていることもあって、Webサービス企業の出身者が当社にフィットするのだと思います。
及川
お話をうかがっていると、従来の金融サービスとはまったく違うものを創ろうとされている印象がありますが、将来的なビジョンをお聞かせください。
椎野
FOLIOは新しい証券サービスを創ることからスタートしましたが、あくまでもそれは入口に過ぎません。FinTechという領域で考えると、それを補完する金融サービスはまだまだたくさんあります。たとえば決済とか、仮想通貨とか、そうした領域にもサービスを拡げていきたいと考えています。そして、いま人々のお金に対する考え方に大きなパラダイムシフトが起こりつつあるなか、それに見合った新しい金融サービスを社会にもたらしていきたい。少し抽象的な話ですが、ECやメディアなどの他のマーケットセグメントと金融を融合させて、いままでにない金融サービスを提供していく、そうしたプラットフォームをぜひ創っていきたいですし、そのための大型資金調達や業務提携も先日実施しました。
及川
プレスリリースを拝見しましたが、ゴールドマン・サックスなどから第三者割当増資で70億円を調達され、さらにLINEとも業務提携されたとのことで、御社への注目度や期待の高さがうかがわれます。
椎野
ありがとうございます。そのプレスリリースのなかでも少し触れていますが、資金調達や業務提携とあわせて、言語解析や機械学習、分散型台帳技術などの先端技術の研究を行う新しい研究機関を立ち上げ、金融を革新していく取り組みをさらに加速させていきます。その根底にあるのは、我々が掲げる「資産運用をバリアフリーに」というミッション。日本の個人資産はまだまだ貯蓄に偏っています。貯蓄から投資へというのは、従来から指摘されている日本の大きな課題であり、それを解決しなければ日本全体の市場の地盤沈下につながり、ひいては個人の生活の質を落としていくことになる。我々はそこにチャレンジしているのであり、そのためのプラットフォームをこれから築き上げたいと考えています。

FOLIOには明確なビジョンがある。それを実現するプロセスも、非常にロジカル。

株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏 株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏
及川
御社の開発事情についておうかがいさせてください。金融システムをフルスクラッチで構築されているとのことでしたが、現状どのような技術スタックでシステムを構成されているのですか?お話しいただける限りで。
椎野
当社では、基幹となる証券システムを“ポート”と呼び、お客様へのサービスに関わるシステムを“フォリオ”と呼んでいます。二つを合わせると“ポートフォリオ”になるというわけなのですが、基幹となるバックエンド部分はScalaのマイクロサービスを採用し、Twitter社がオーナーのFinagleというマイクロサービス用のフレームワークを導入しています。これを使ってApache ThriftによってRPCでお互いに通信しています。
及川
フロンドエンドはどのような構成で?
椎野
Webとアプリの両方ありますが、その中間でデータを差配するBackend for Frontendの三層構造になっています。このBFFの部分はNode.jsを使っています。
及川
インフラはいかがですか?
椎野
いまAWSに移行しているところです。従来、金融機関はいろいろなレギュレーションがあるためクラウドを使うことに抵抗があり、我々も当初はオンプレで運用していたのですが、よくよく調べるとオンプレに縛られる理由がないことが判って、いまクラウドに移行している最中です。
及川
金融データを扱うシステムをAWSに載せる上で、信頼性の面など留意されていることもあるかと思います。そのあたりは?
椎野
はい。オンプレからAWSへ移行する際、考え方は二つあると思うんですね。完全にAWSに移行する前提でアーキテクチャを組むのも勿論ひとつの手ですが、クラウドはスケールすると非常に費用がかかってきます。なのでコスト最適化を考えて、将来的にオンプレに戻すことを想定したアーキテクチャを組んでおくという考え方もあり、、、どちらを選ぶべきか、一カ月ぐらい真剣に悩みましたね。
及川
可逆的にするか、非可逆的にするかということですね。
椎野
おっしゃる通りで、私も過去、AWSでスケールしてしまって物凄くお金がかかってしまった経験があって、可逆的にしておかないと拙いかとも思ったのですが、でもその時よりもFOLIOはビジネスのスピードが速く、組織も急拡大しています。それに対応するには自分たちで一からモジュールをすべて作るのではなく、AWSの提供サービスを上手く使いこなすほうが効率的かつ安定的だと判断し、いまは非可逆の方向で進めています。
及川
お話をうかがっていると、椎野さんはテクノロジーとビジネスの両方に精通されているようにお見受けします。椎野さんご自身はどのようなご経歴でいらっしゃるのですか。
椎野
コンピュータは小さい頃から好きでしたね。小学生の時にシャープのX1turboを買ってもらって、Basicでゲームを作って遊んでいました。でもプログラミングは好きだったものの、それを職業にしようとはあまり思っていなくて、米国の大学で専攻したのはマーケティング。そのデータ分析の手法としてOLAPを勉強し、現地で実際にマーケティング業務に携わっていたのですが、当時アメリカはITバブルに沸いていて、翌年には日本にもその波が押し寄せると聞き、日本に戻って自分で事業を起こせば稼げるんじゃないかと(笑)。
及川
それでアメリカから帰国して起業されたのですね。
椎野
最初に立ち上げた会社では、予約システムのパッケージソフトを開発して結構売れたのですが、会社を拡大するほどには収益化できず、2年半ぐらいで他社に売却しました。その後また新たな会社を立ち上げ、そこでは電子カルテシステムが有望だと見込み、3人ほどですべて開発してリリースしました。こちらもかなり売上は立ったものの、BtoBは企業間の契約などが面倒でスケールさせるのにかなりパワーがかかる。そこで思い切ってBtoCにシフトしようと、そちらも事業売却してソーシャルアプリを開発するコミュニティファクトリーの創業に参加しまして、いくつかヒットサービスを生み出し、最終的にはヤフーに売却してイグジットを果たしました。私自身はそのままヤフーにジョインしてしばらくスマートフォン戦略の指揮を執り、その後、ボストンコンサルティンググループの子会社のBCG Digital Venturesの立ち上げを担い、2017年の夏からFOLIOにCTOとして参画しています。
及川
こうして経歴をおうかがいすると、椎野さんはエンジニアであると同時に起業家でもいらっしゃるのですね。そんな椎野さんがFOLIOに参画されたのは、どのような経緯からなのでしょうか。
椎野
実はFOLIOのことは創業時から知っていて、ヤフー時代のメンバーがこちらの立ち上げに関わっていたんです。私自身もFinTechに興味を持っていて、彼が社長の甲斐に引き合わせてくれたのですが、実に明確なビジョンを描いていて共感できましたし、そこに辿りつくためのプロセスも非常にロジカルでした。私も起業する上ではビジョンが何よりも重要だと考えていましたが、一方で過去の起業経験ではそれを達成するためのフィジビリティが欠けていたという反省もあって、共感できる世界観をロジカルに実現しようとしているFOLIOにとても魅力を覚え、こちらに参加しようと決意したのです。

目指すは、金融界のAWS。エンジニアドリブンで、社会全体を巻き込むサービスを。

株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏 株式会社FOLIO 取締役 CTO 椎野 孝弘氏
及川
椎野さんはFOLIOにCTOとしてジョインされたとのことですが、CTOというポジションは会社によって役割が違います。FOLIOにおけるCTOの存在とは?
椎野
企業が置かれたフェーズによってCTOの役割は異なってくると思います。現在のFOLIOでいえば、エンジニアリングに関しては実力者が揃っているのでうまく機能しています。ですからCTOの私に求められるのは、彼らから知見を吸い上げてFOLIOとしての将来戦略を立てること。さらに、エンジニアの組織化も図っていくことも今後の課題です。サービスのKPIやいま企画している新規事業を考慮すると、向こう1年間でエンジニアを倍にしないと事業を回せなくなるという結論に達し、30名ほど採用する計画。1年後には計60名のエンジニア組織になるわけで、そのストラクチャーもいま考えているところです。
及川
インタビュアー 及川卓也 インタビュアー 及川卓也 及川専門性のあるエンジニアから意見を吸い上げて戦略を考えるためには、さまざまな領域に精通し、有望な技術をジャッジする目利きの力が求められるように思います。一方でCTOの立場になると、やはりすべての技術を究めて造詣を深めていくのはなかなか難しい。そのあたりはどう対応されていますか。
椎野
確かに、さまざまな技術をすべて細部まで掘っている時間はないので、そこはメンバー各々に掘り下げてもらい、フィードバックをもらってジャッジしています。その際には、世の中の方向感をつかんだ上で最も合理的なものを選択する感じでしょうか。
及川
時には、ご自身で直に技術に触れて判断するようなこともありますか?
椎野
いまはそうした状況ではありませんが、いざというときはいつでも「自分がやる」という気概を忘れないようにしています。これまでベンチャーをいくつか立ち上げてきましたが、いつも最悪の事態を想定するんですね。会社が傾くとエンジニアがみんな離れていなくなってしまうかもしれない。自分がリソースとしてアロケートしなければならない、そんな瞬間もくると考えてこれまで生きてきましたから……。
及川
これからエンジニア組織を拡大されていくとのことですが、どんな組織がFOLIOにふさわしいのか、椎野さんの想いはいかがでしょう。
椎野
いまは基本的にフラットで、トップも現場のエンジニアも自由闊達に議論できる風土ですが、そうしたベンチャーマインドは組織が大きくなっても維持していきたいですね。これから人が増え、情報を効率的にシェアするためには、ある程度階層化しなければならないと考えていますが、一般的な係長、課長、部長などの役職を設けて管理する組織にはしたくはない。役割としてのリーダーシップは求めたいものの、役職としてのヒエラルキーは作りたくないと考えています。
及川
ありがとうございます。ちなみに私は個人的に、エンジニアの方々が、組織を率いる「マネジメント」ミッションをどう捉えているのかにかねてより関心を持っているのですが、椎野さんは最初からマネジメント志向でいらっしゃったのでしょうか。
椎野
志向はさておき、起業した当初は、プレイヤーとしてすべて自分で手を動かしてサービスを創っていましたが、すぐに部下を持つことになり否応なくマネジメントにあたることになりました。
及川
マネジメントで苦労されたことはありますか。
椎野
マネジメントに関していえば、苦労しかないです(笑)。振り返ると、私にとって大きな転機になったのはヤフーに移籍した時ですね。それまでベンチャーを起業した時は、自分の好きな技術をやる、自分が楽しいとメンバーもハッピーになる、という勝手な理屈で(笑)、自分が作ったフレームワークをばらまいでみんなに作らせていました。そしてベンチャーだとみんな勝手に育つんですね。しかし、ヤフーに移って大きな組織をマネジメントすると、フォーカスポイントの違いに戸惑うことが多くて……たとえるなら、ベンチャーが有事のマネジメントに対して、ヤフーは平時のマネジメントでしょうか。いろんな志向を持つエンジニアたちをどうワークさせて大きな目標に到達させるかに腐心しました。でも、そうして「有事」と「平時」の両方を経験できたことは、私自身のエンジニアとして、また組織をマネジメントする役割として大きな財産となりましたし、FOLIOの成長フェーズにおいてきっと活きてくる経験だと思っています。
及川
FOLIOが求めているエンジニアの理想像について、椎野さんのお考えをお聞かせ願えますか。
椎野
企業が成長すると多様性が重要になると思うので、絶対にこうでなければならないという人材像はありません。ただひとつ求めたいのは、我々が目指す世界観に共感できるかということ。スキルに関しては、何か自分の専門性を深めつつ、その周辺についてもキャッチアップしようとする「T字型」志向のエンジニアが望ましいですね。
及川
椎野さんは、FOLIOをエンジニアとってどんなチームにしていきたいですか。
椎野
目指しているのは金融界のAWSです。すなわち、新たな金融を創造していく過程で、その仕組みを外部に公開して提供できるようになれば、テクノロジーだけで事業を回せるようになり、エンジニアドリブンでできることがどんどん増えていく。そこで確立したテクノロジーを、金融業界のみならず非金融の領域にも展開して、新しいサービスを次々と実現していきたい。そしてFOLIOでキャリアを積むことでエンジニア全員がそうしたサービスを自ら創り出せる力を得て、他社から倍の給料で採用したいと思われるような人材の集団にしたいです。
及川
確かにまだ金融サービスは民主化されていないのが現状です。御社の取り組みは金融業界以外の事業者にとっても新たな市場を拓いていく上で非常に魅力的な動きであると感じます。
椎野
ありがとうございます。いまFinTechの領域では、トークンエコノミーなどこれまでに想像すらされていなかったサービスモデルが出現しはじめています。我々もこの領域で革新的なサービスを是が非でも立ち上げたいと考えており、そしてそのプロセスを通して我々の本来のミッションである、「日本が抱える社会課題の解決」にチャレンジしていきたい、そう考えています。
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